こんにちは、七宮さん(@shichinomiya_s)です。
前回は「トークン95%削減」を謳うHeadroomを実測しましたが、今回もGitHubで急騰中(公開約9日で700★超、The New Stackも特集)のADHDという、Claude Code / Codex 用のskill(スキル)を検証します。/adhd "課題" と打つだけで、エージェントが複数の異なる視点で並列にアイデアを発散させ、批評して絞り込むというもの。作者は「単発回答に比べ新規性2.9倍・トラップ検知5.2倍」と謳っています。
結論から言うと、本当に賢く(広く・新しく)なります。ただしタダではありません。私の手元の実測では、ブラインド採点で2問とも単発回答よりADHDが「総合的に有用」と判定され、特に新規性とトラップ検知が大きく伸びました。一方で所要時間は約2.3倍、出力量は約1.9倍。さらに数回まわしただけでClaudeの利用上限に到達しました。「5〜10倍のコスト」は誇張ではありません。正直にレビューします。
ADHD とは何か — 「最初の3案」の先へ
LLMは線形のChain-of-Thought(思考の連鎖)だと、最初に言ったことに引きずられがちです。Tree-of-Thought(思考の木)で枝分かれさせても、同じ文脈を共有したまま広げるので、最初の固着が枝全体に残ります。ADHDはこれをプロンプトの問題ではなくアーキテクチャの問題と捉え、こう動きます。
- 発散 — N本の独立したプロセスを、わざと歪めた「認知フレーム」(規制当局・生物・スピードラン・10歳児・予算0…)で並列起動。各ブランチは互いの文脈をゼロ共有。
- 収束 — 別の批評パスがアイデアを採点・クラスタリングし、罠(魅力的だが破綻する案)を剪定して、上位だけを深掘り。
「『○○のやり方を数個ちょうだい』系」の設計・命名・API設計・曖昧なデバッグに効く、と作者は言います。逆に構文や定型・正解の決まった作業には使うな、ともskill自身が明記しています。
検証環境と方法
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| マシン | Apple M1 Max / 64GB |
| エージェント | claude CLI 2.1.161(Claude Code・購読認証, APIキー不要) |
| skill | adhd-agent 0.1.4(npx skills add UditAkhourii/adhd で導入) |
| 方法 | 同一課題を「baseline(単発で数案)」と「ADHD」で実行し比較 |
課題は2問。P1: マルチテナントSaaSのAPIレート制限設計(複数アプローチ)、P2: 断続的な本番504タイムアウト(約1回/時・パターン不明)の調査方針。後者はADHDが得意と公言する「曖昧なデバッグ」枠です。
品質は依怙贔屓を避けるため、もう一つのclaude呼び出しでブラインド採点しました。どちらがADHDかを伏せ、A/Bの位置も問題ごとに入れ替えています。
npx skills add UditAkhourii/adhd
# baseline
claude -p "<課題。数案ください>"
# ADHD
claude -p "Use the adhd skill on this problem: <同じ課題>"検証結果① 品質 — 2問ともブラインドでADHDの勝ち

| 評価軸(1-10・2問平均) | baseline(単発) | ADHD |
|---|---|---|
| 幅(アプローチの多様さ) | 7.0 | 9.0 |
| 新規性(非自明な発想) | 4.5 | 9.0 |
| トラップ検知(罠の指摘) | 5.0 | 9.0 |
| 実行可能性 | 8.5 | 8.0 |
2問ともブラインド判定でADHDが「総合的に有用」と選ばれました。伸びが大きいのは新規性(+4.5)とトラップ検知(+4.0)で、作者主張の「新規性・トラップ検知が強い」という方向性とちゃんと一致します。一方で実行可能性だけはbaselineがわずかに上。教科書的な解は具体的ですぐ実装に移せる、という当然の強みです。
検証結果② コスト — 時間2.3倍・出力1.9倍、そして利用上限

| 項目(2問平均) | baseline | ADHD | 比 |
|---|---|---|---|
| 所要時間 | 95.4秒 | 216.1秒 | 2.26倍 |
| 出力量 | 5,623字 | 10,697字 | 1.93倍 |
ADHDは内部で約10回のエージェント呼び出しを行うため、時間もトークンもまとめて増えます。実際、私の検証でも数回まわしただけでClaude購読のセッション利用上限に到達し、リセット待ちが発生しました。skillが自己申告する「単発の5〜10倍のコスト」は、体感でも数字でも本当でした。
考察 — 何が「効いて」いたのか
差がいちばん出たのは解の中身でした。P1のレート制限設計で、baselineは「Redisトークンバケット/ローカルメモリ+一貫ハッシュ」など教科書的な4手法。対してADHDは、5フレームで30案を出し切ってから、たとえば「中央予算をノードがリースし、ホットパスはGCRAでネットワーク呼び出しゼロ」「加重公平スケジューリング(WDRR)で計測ではなくスケジューリングとして解く」「容量の先物取引」など、単発ではまず出てこない非自明な選択肢に踏み込み、それぞれのload-bearing risk(設計の生命線リスク)まで添えていました。
つまりADHDの価値は「正解を速く出す」ことではなく、「自分では思いつかない筋を、罠ごと洗い出してくれる」こと。発想の壁打ち相手として強い、という納得感のある結果です。
向いている人・注意点
向いている人:
- 設計・命名・API設計・戦略など正解が一つでない問題でアイデアを広げたい人
- 「自分の最初の案に固執していないか」を第三者視点で点検したい人
- Claude Code / Codex を既に使っていて、skillを足すだけで試せる人
注意点:
- コストは本物。時間2.3倍・出力1.9倍、利用枠を一気に消費する(数回で上限到達)
- 構文・定型・正解が決まった作業には過剰(skill自身も「使うな」と明記)
- 今回の品質スコアはLLMによるブラインド判定=主観を含む。客観値(時間・出力量)とは性質が違う。サンプルも2問と小さい
- 作者の「5.2倍」等は作者の課題での値。私の別課題・別採点では方向は一致するが倍率は控えめ
まとめ
話題のADHD skillを、Claude Codeで実際に単発と対決させた結論です(数値は実測)。
- 2問ともブラインドでADHDの勝ち。特に新規性4.5→9.0・トラップ検知5.0→9.0
- 強みは非自明な解と罠の洗い出し。実行可能性はbaselineが僅差で上
- コストは時間2.26倍・出力1.93倍、数回で利用上限に到達
- 結論:正解が一つでない「設計・発想」の壁打ちには効く。定型作業には過剰
「最初の3案で満足してしまう」自覚がある人ほど、設計判断の前に一度かけてみる価値はあります。ただしここぞ、という問いに絞って使うのがコスト的にも正解です。
検証ノート(再現用)
本記事の数値はすべて筆者のM1 Max(64GB)での実測です。
環境: Apple M1 Max / 64GB / claude CLI 2.1.161(Claude Code・購読認証)/ adhd-agent 0.1.4
# skill導入
npx skills add UditAkhourii/adhd
# 同一課題で baseline と ADHD を実行(時間計測)
/usr/bin/time -p claude -p "<課題>"
/usr/bin/time -p claude -p "Use the adhd skill on this problem: <課題>" --permission-mode bypassPermissions
# 品質はブラインドで別のclaudeに採点させる(A/Bを伏せ、位置も入替)実測値: 所要時間 baseline 95.4秒 / ADHD 216.1秒(2.26倍)。出力量 5,623字 / 10,697字(1.93倍)。ブラインド判定(1-10, 2問平均)幅7.0→9.0・新規性4.5→9.0・トラップ検知5.0→9.0・実行可能性8.5→8.0。勝者はADHDが2/2。
既知の制約: 品質はLLM-as-judgeによる判定で主観を含む。課題は2問と小サンプル。ADHDを数回実行した時点でClaude購読のセッション上限に到達したため、サンプル数を絞った(コストの大きさ自体が一つの所見)。作者公表値(新規性2.9倍・トラップ検知5.2倍)は作者の6課題での値で、本検証とは課題・採点が異なる。





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